あいさつ
あいさつ
2025年4月より、下山正徳先生、西條長宏先生、田村友秀先生、飛内賢正先生、大江裕一郎先生に続く第6代の日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)代表者を拝命いたしました、国立がん研究センター中央病院の金光幸秀です。この由緒あるJCOGの代表者を務めることは、私にとって望外な喜びであり、その職責の重さに身が引き締まる思いです。
JCOGは、1978年に開始された厚生省のがん研究助成金指定研究「がんの集学的治療の研究」班(主任研究者:末舛恵一先生)を前身としています。1990年に、当時の主任研究者である下山正徳先生がJCOGと命名し、1991年には統計センター(現データセンター)が設置されました。その後は、専門領域ごとの研究グループとそれに所属する医療機関、データセンターと運営事務局の中央支援機構、および監視機構としての各種委員会の3要素からなる、日本最大の多施設共同研究グループとして、新しい治療法や治療戦略の評価を通じて、がん患者の予後改善を目指してまいりました。これまでの研究成果をもとに、今後のがん医療においては、いくつかの重要なトレンドへの対応が求められています。
私のビジョンは以下の通りです。
- 個別化医療の進展:患者ごとの遺伝的背景や腫瘍特性に基づいた治療法が選択されるようになり、JCOGの研究によるデータは、各患者に最適な治療法の選定に役立つエビデンスを提供し、個別化医療の推進に寄与します。
- 新しい治療法の開発:免疫療法や標的療法などの新しい治療法が益々注目され、JCOGの臨床試験によってその効果が実証され、広く導入されることが期待されます。
- 早期発見や予防の重視:これに関する研究が進むことで、JCOGの成果が新しい診断法の開発につながり、生存率の向上に寄与します。
- データ駆動型医療の発展:ビッグデータやAI技術の進展により、治療法の選択や予後予測がより精緻化され、JCOGの蓄積されたデータが新たな研究の基盤となります。
- 患者の参加とエンパワーメント:医療研究開発における患者・市民参画(PPI)の取り組みを推進することで、患者が治療に関与する機会が増え、JCOGの成果が情報提供や教育に役立つことで、患者自身のエンパワーメントが促進されます。
JCOG代表者 金光幸秀
JCOGは、外科手術に関する研究、外科手術や放射線治療と薬物治療を組み合わせた集学的治療の研究、高齢者を対象とした研究などで、特に大きな業績を残してきました。これらの研究は正に公的研究費でなければできない重要な臨床研究です。その一方で、私たちはがん医療の進展に寄与するための柔軟かつ迅速な対応が求められています。具体的には、未承認薬を用いた医師主導治験や先進医療制度下の臨床試験を行う体制の強化を図り、プロトコールの作成や審査の迅速化を進めていきます。これにより、急速に進化するがん治療に対応できる体制を整えていきます。また、国内外の他の臨床試験グループとの共同研究を積極的に実施し、情報共有やリソースの最適化を図ります。一方で、他の臨床試験グループや企業治験との競合も考慮し、私たちの研究が持つ独自の価値を明確にし、競争力を高める努力を続けます。さらに、16の研究グループ間でのアクティビティの差を縮めるため、各グループの活動を支援し、協力体制を強化します。これにより、全体としての研究の質を向上させ、がん患者に対する最善の治療法を提供することを目指します。
伝統あるJCOGをさらに発展させるよう努力すること、が私の目標です。がん治療の新たな地平を切り開くために、皆様のご支援とご協力を賜りながら、共に未来のがん医療を創造していきましょう。私たちの努力が、がん患者とその家族に希望と光をもたらすことを心から願っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。